税理士には、使用している税務システムによっては、顧問先の情報を網羅的に登録できるものもありますが、私が使っているシステムはそれほど網羅性が高いものではなく、お客さんの情報、その他経営に関わる情報を一元的に管理できる仕組みを探していました。
候補は、Evernote、kintone、そしてNotion。
その中で、私はNotionを採用し、今では毎日の業務で欠かせない存在になっています。
1. 導入
「Notionって最近よく聞くけど、結局どういうもの?」
「なぜ税理士が業務に取り入れるのか?」
こうした疑問を持つ方に向けて、私自身の利用例を交えながら解説していきます。
2. Notionとは
Notionは、メモ、タスク、データベースを一元化できる「オールインワンの仕事管理ツール」です。
公式ヘルプページでも、
Notionのデータベースは「ページの集合体」であり、各ページにプロパティを設定することで、表計算ソフトのように活用できると説明されています(Notion公式)。
ExcelやGoogleドキュメント、タスク管理アプリの機能をまとめて使えるだけでなく、以下のような強みがあります。
Relation / Rollup(関連付け・集計)
複数のデータベースをつなぎ、横断的に情報を扱うことができます。
例えば「顧客DB」と「月次DB」を関連付けることで、ある顧客の月次実績や進捗状況を自動的に表示できます。
郵送DBを連携させれば、「この顧客は発送済みか?」を自動反映する仕組みも作れます。
ビュー切替(表・カレンダー・ギャラリー等)
同じデータベースを「表形式」「カレンダー形式」「ギャラリー形式」などに切り替え可能。
税理士業務では「納付スケジュールをカレンダー表示」「顧客ごとの契約一覧を表表示」「申告済み案件だけをフィルター」といった形で活用できます。
Formula(数式・条件式)
プロパティ間の演算や条件分岐ができる機能です。
例えば「今月の残高見込み」「入金遅延アラート」「前期比増減率」などを自動で算出でき、Excel的な使い方をDBに組み込むことが可能です。
自動化・外部連携(Zapierなど)
Notion単体では通知機能がシンプルですが、ZapierやMakeといった外部ツールと連携することで「郵送DBに登録されたら自動で相手にメール通知」「タスク完了時にSlackへ連絡」といった自動化が可能になります。
マルチデバイス対応
PC・スマホ・タブレットですぐに同じDBを開けるため、外出先で思いついたことを即メモに残したり、日報を入力したりできます。
3. 私がNotionを使う理由
私がNotionを選んだ理由はシンプルで、「情報の一元化と可視化がしやすい」からです。
- クラウドベースなので、PC・スマホ・タブレットで同じ情報を扱える
- 一つのデータを、表・カレンダー・ステータス別ビューなど複数の視点で管理できる
- Excelのような関数も使えて、DBごとのカスタムが容易
Excelやスプレッドシートでも管理できますが、どうしてもテキスト情報(議事録やメモ)は別管理になりやすい。
Notionは「テキストとデータをまとめて扱える」点で優れており、事務所運営の中心システムに据えることにしました。
一方で、kintoneは業務システムとして強力ですが、少人数での税理士事務所にはオーバースペックでした。
4. 税理士事務所でのNotion活用DB例
私の事務所では以下のようなデータベースを作っています。
- 顧客データベース:基本情報・契約内容・担当履歴を一元管理
- 月次データベース:税務・経理処理の進捗を管理(顧客DBと分離して軽量化)
- 郵送物管理DB:発送履歴をZapierと連携し、自動で通知メール送信
- やったことリスト:TODOと連携させ、日報としても活用
- 税務スケジュール:申告・納付日をカレンダー管理し、漏れ防止
- 関与先メモ / 議事録:MTG時のメモやAI文字起こしを保存
ここでは「データベース(情報の管理)」と「データファイル(保存先)」を分けています。
ファイルはGoogle Driveで管理し、そのリンクをNotionのメモや議事録に貼ることで、すぐ参照できる状態を作っています。
5. 個別データベースを分ける理由
- 顧客DBと月次DBを分ける理由
データが重くならないように。1つのDBを肥大化させず、関連付け(Relation / Rollup)で必要な情報をつなぎます。 - 郵送DBを作る理由
レターパックの追跡番号を貼る紙台帳から脱却し、番号をDBで管理。さらにZapierで「発送通知を自動送信」する仕組みを組み込んでいます。 - TODO / Doneリストを分ける理由
やったことリスト(日報)と連携させ、未処理タスクを漏れなく管理するため。
6. まとめ
なるべく情報を一か所に集めることが効率化の第一歩です。
Notionは「個人の効率化」だけでなく「事務所全体の仕組み化」に直結するツールです。
Relation / Rollup / Formula といった仕組みを組み合わせれば、情報が自動で流れ、手作業が減っていきます。
もちろん、デメリットもあり、税務システムやkintoneの方が適している場面もあります。
ですが、少人数の事務所運営において、私はNotionを“ストレスなく情報を集約できるシステム”として毎日使っています。
思いついたメモも、スマホからすぐ書き残す。
TODOも、その日の業務ログもすぐ残せる。
だからこそ、私はNotionを「毎日開く」習慣になっています。
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